研究概要 |
今年度の研究成果は以下の通り(なお報告すべき研究項目を一部変更した) a)ホヤのHox遺伝子に関する研究:我々は,カタユウレイボヤのHox遺伝子について,クラスター構造は壊れていること,にもかかわらずコリニアリティを思わせるような発現パターンが幼生の神経管や幼若体の消化管でみられること(Ikuta et al., PNAS 2004),そして幼生までの発生過程における機能は限定的であることを明らかにしてきた(Ikuta et al., Development 2010)。このようなカタユウレイボヤのHox遺伝子に関する知見は他の動物では類例をみないが,ホヤの中でどの程度保存されているのかについての情報はない。ホヤ綱を構成する二つの目のうち,カタユウレイボヤとは異なる壁性目に属するマボヤHox遺伝子のクラスター構造の解析を目指して,BACライブラリーのスクリーニング,染色体標本作製を試行した。その結果,カタユウレイボヤでは異なる染色体にあるHox10とHox12が一つのBACクローンに見出され,ホヤ綱の中でHox遺伝子クラスター構造に違いがあること,またマボヤの染色体数が2n=16であることが示唆された。 b)軸形成関連の発生遺伝子に関する解析:カタユウレイボヤ胚においてNodalシグナリングの阻害で引き起こされる眼点の形成異常について解析を行った。Nodalは目の形成に必須な遺伝子Rx,および眼点のマーカー遺伝子の発現を抑制すること,眼点色素細胞の正中から右側への移動に働くことが明らかにされた。またNodal遺伝子の左側での発現開始に関わる候補転写因子が予備的に同定された。
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