本研究は、砕片分離と再生による無性生殖を行うヤマトヒメミミズEnchytraeus japonensisにおける再生開始機構および再生幹細胞の実態解明をめざして、再生初期に再生芽先端付近に発現する新規遺伝子grimpに着目し、その機能を明らかにすることを目的とする。これまでの研究から、RNAi法を用いてgrimp遺伝子発現を抑制すると、幹細胞増殖阻害および再生阻害が誘導されることがわかっており、grimp遺伝子は再生初期のキー遺伝子と考えられている。本課題では、grimpの再生開始機構および幹細胞増殖における役割についてさらに直接的に証明するために、タンパク質レベルの機能解析を中心に行う。grimpタンパク質はそのN端に、細胞接着ドメインとして知られるRGDS配列とリン酸化部位を含む3つのリピート構造を持つが、全体として既知遺伝子との相同性は確認されていない。またこれまでの配列解析では、シグナル配列が含まれておらず、細胞内外の局在がわかっていない。 平成22年度は、まず、ドメイン構造を考慮して再度データベースサーチを行い、相同遺伝子を探索した。この結果、数種の無脊椎動物のゲノムにリピート構造と相同な配列が存在することを突き止めたが、遺伝子機能に関する情報は得られなかった。また、grimpタンパク質局在を明らかにし、機能阻害実験を行うことを目的として、抗体作成の準備を行った。grimp遺伝子ををタグ付き(HaloTag)ベクターに組換え、大腸菌にてタンパク質発現誘導を行った。次にこのタンパク質を精製し、抗体作成を行う。一方、RGDS配列の再生阻害効果について検証するために、再生芽にRGDSペプチドを注入し解析する系のセットアップと予備実験を行った。
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