研究課題/領域番号 |
22570208
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
野呂 知加子 日本大学, 生産工学部, 准教授 (80311356)
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キーワード | 発生・分化 / 再生幹細胞 / 遺伝子機能解析 / 細胞接着 / タンパク質 / ヤマトヒメミミズ / 幹細胞増殖 / 無性生殖 |
研究概要 |
本研究は、砕片分離と再生による無性生殖を行うヤマトヒメミミズEnchytraeus japonensisにおける再生開始機構および再生幹細胞の役割解明をめざして、再生初期に再生芽先端付近および中胚葉系再生幹細胞ネオブラスト系列細胞に発現する新規遺伝子grimpに着目し、その機能をタンパク質レベルで明らかにすることを目的とする。これまでの研究から、RNAi法を用いてgrimp遺伝子発現を抑制すると、幹細胞増殖阻害および再生阻害が誘導されることがわかっている。grimpタンパク質はそのN端に、細胞接着ドメインとして知られるRGDS配列とリン酸化部位を含む3つのリピート構造を持つが、全体として既知遺伝子との相同性は確認されていない。 平成23年度は、前年度に引き続き、grimpタンパク質の局在を明らかにし、機能操作実験を行うことを目的として、grimp遺伝子ををタグ付きベクターに組換え、大腸菌にてタンパク質発現誘導と精製を行ったが、その効率はよくなかった。一方、grimpタンパク質と再生幹細胞系譜の関係を解明する準備として、BrdUパルスチェイス実験によりネオブラストの増殖と移動について調べ、再生幹細胞増殖とテロメラーゼ活性との相関を明らかにし、論文発表した。また、grimp遺伝子の発現低下に伴って発現が低下する遺伝子の解析を開始した。他種におけるgrimp相同遺伝子の探索とgrimpタンパク質機能解明のために、哺乳類問葉系幹細胞株C3H10T1/2にgrimp-GFP融合遺伝子を強制発現させ、細胞増殖および中胚葉系細胞分化誘導への影響について検討した。遺伝子導入前後で細胞増殖度や種々の分化マーカー遺伝子発現に差は見られなかったが、grimp-GFP融合タンパク質の半減期がGFP単体と比較して短いことがわかった。この結果を元に、大腸菌における発現誘導と精製法の改良を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
grimpタンパク質の精製と抗体の作成に関しては、予定より遅れているが、幹細胞系譜解析や幹細胞活性測定の方法を開発し、論文発表した。また、異種細胞へのgrimp-GFP融合遺伝子により、grimpタンパク質の性質の一端が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き、タグ付きgrimpタンパク質の精製を推進し、再生芽に導入して挙動を解析するとともに、抗体を作成して機能阻害実験を行う。grimp-GFP融合タンパク質の半減期がGFP単体と比較して短いことがわかったので、タンパク質分解のしくみについて探求し、誘導タンパク質精製の効率改善に生かす。その上で、grimpタンパク質と結合するタンパク質の探索を検討する。またgrimp遺伝子の発現低下に伴って発現が低下する遺伝子の、発現局在解析をISHを用いて行う。
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