本研究は、ヤマトヒメミミズ再生初期に再生芽で発現し、再生のキーとなる遺伝子grimpタンパク質の機能、およびgrimpタンパク質と相互作用するタンパク質について解析することを目的としている。 grimp遺伝子の一部とホモロジーがある遺伝子が、無脊椎動物のESTとして存在することをデータベース検索によって確認した。しかし、アノテーションはついていないので、機能予測はできなかった。 これまでに、grimpのタンパク質としての機能を調べるために、grimpのコーディング領域をタグ付きベクターに組込み、大腸菌で発現誘導したタンパク質の精製を試みているが、RNAまではできているものの、タンパク質生成の効率があまりよくなかった。一方、grimp- GFP融合遺伝子を、マウス間葉系細胞株C3H10T1/2に導入したところ、タンパク質が発現していることが、抗GFP抗体によるwestern blottingおよび細胞染色によって確認できた。しかしこのタンパク質の半減期は短く、細胞内で分解されやすい性質を持つことが示唆された。上記の大腸菌におけるタンパク質生成効率の低さも、この性質に起因する可能性がある。また、この融合タンパク導入により、特に増殖阻害や分化誘導等の効果は見られず、遺伝子発現変化も検出されなかった。 そこでさらに工夫し、grimpのN端およびC端へGFPを融合させたベクター構築を行った。この融合ベクターをヒト肝臓がん細胞株に導入したところ、融合タンパクの発現が確認できた。この融合タンパク質を、ヤマトヒメミミズ再生芽およびマウス間葉系細胞株に導入し、増殖、分化、再生への影響について調べると共に、融合タンパク質の分解過程について検討している。
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