本研究提案では、大脳皮質発生過程において中胚葉である脊索前板由来細胞が背側の大脳皮質にまで移動しソニックヘッジホッグを分泌して、神経幹細胞の発生に関与し皮質の組織形成を調節する可能性を検討している。昨年度は、以下の点を明確化することを目的として研究を行った。 1、 脊索前板由来間充織細胞が、どのような細胞として発生しているのか?(細胞系譜実験) 2、 脊索前板細胞は大脳皮質の発生に関与しているのか?関与には、時期依存的(E8~E12.5頃まで)、領域・領野依存的(前後・背腹軸、VZ/SVZ/中間帯/皮質板など)な違いがあるのか?(脊索前板細胞の実験生物学的、遺伝学的操作) 脊索前板細胞の大脳皮質への到達について移動経路と定着位置を明らかにするため、蛍光色素DiIで胎齢7.5日のラット胚の脊索前板を標識し、それらの細胞の発生運命の検討を行った。胎齢7.5日の脊索前板の表面積は幅約50μmX縦約200μmであり、標識サイズは直径50μmとした。標識を行った胚は全胚培養器で60-72時間in vitroで培養し、脊索前板由来細胞の大脳皮質への移動並びに分布を観察記録した。その結果多くの細胞が間脳視床下部周辺に集積する一方、大脳皮質表面への移動を示す細胞も観察された。また遺伝学的に正中細胞集団の系譜を決定した。当初ES細胞を用いて脊索前板特異的な発現を示すGoosecoidの遺伝子座にタモキシフェン誘導性Creリコンビナーゼ(CreERT2)遺伝子をノックインする予定であったが施設の都合、Shh-CreERT2マウスを用いた。Shh-CreERT2マウスとZ/EG double reporterマウスと交配させ、脊索前板が発生する時期にタモキシフェンを投与し脊索前板由来の細胞をEGFPの発現で観察を行った。その結果、DiIで観察された分布と同様の結果が観察された。
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