研究課題/領域番号 |
22570211
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
近藤 真理子 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70372414)
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キーワード | 再生 / 進化 / 棘皮動物 / 遺伝子 / 発生・分化 |
研究概要 |
再生現象を総合的に理解するためには多くの生物種を対象として再生に関わる分子機構を検討する比較生物学的アプローチが必要である。棘皮動物は強い再生能力を持つものが多いが、再生に関与する分子機構や未分化細胞の存在はほとんど明らかにされていない。 棘皮動物の一つであるニッポンウミシダは40本ほどの腕を持ち、腕の特定の部位で自切する。その後、速やかに再生が開始する。 本研究ではこれまで様々な生物種で発生において重要な役割を持つレチノイン酸(RA)に着目し、ウミシダの再生関連遺伝子の候補としてRAの合成と分解に関与する遺伝子を選んでクローニングし、解析した。また、再生との関連が未知であるHox遺伝子の解析も行った。これらの遺伝子群は体軸の領域性への関与が知られているので、これらを通して種を超えた再生機構の保存性や再生腕の体軸についての知見が得られると考えた。 その結果、raldh(RA合成に関与)の発現は再生組織では見られず、もし合成されるとしたら、再生の基部側の組織で作られていることが予想される。また、cyp26(RA分解に関与)が再生組織の先端に発現することが明らかになった。つまり再生組織の先端ではRAが分解され、腕の遠近軸に沿って濃度勾配ができあがっていると考えられる。一方、RAR(RA受容体)は水管系の内腔の上皮に発現していた。すなわち、これらの細胞がRAの標的となっている可能性が示唆される。このような再生組織でのRAの濃度勾配は最近アフリカツメガエルの再生肢でも示されているので、動物門を超えたシグナルとしての役割の保存性が考えられる。 Hox遺伝子は組織の先端、組織の内側、水管系の内腔、などにはっきりした発現パターンを示している。しかし、Hoxの番号順に並んで発現しているようには見えない。現在、これらの発現組織の同定と他の棘皮動物でのパターンの比較に向けた解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
すでに単離していた遺伝子以外にも単離し、詳細に解析すべきものがあることが判明したため、追加解析が必要である。また、ウミシダ以外の棘皮動物の再生組織を得ることを試みているが、実験材料の調達と飼育が困難であり、完全な再生を再現するためには再生時期の検討が必要であることが判明した。そのため、実験が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
実験材料の調達と飼育の困難に対しては材料として用いる生物種を検討し、多くの個体数が採集できるものを使用する。さらに、再生時期の検討も必要であると考えている。 遺伝子のクローニングに関しては、海外の共同研究者がすすめているゲノム解析のデータを利用し、迅速に進めていく予定である。
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