研究課題/領域番号 |
22570212
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
彦坂 暁 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 助教 (30263635)
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研究分担者 |
河原 明 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (50112157)
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キーワード | トランスポゾン / 進化 / 遺伝子発現調節 / ツメガエル |
研究概要 |
[目的]DNA型トランスポゾンは同じホスト内で長期間転移活性を保って存続するのは難しいと一般に考えられてきた。ところが我々はツメガエルのMITE型トランスポゾンファミリーT2-MITEのいくつかのサブファミリーが数千万年以上もの長期間、活性を保ってきたらしいことを発見した。本研究では「これらのMITEsが転移・増幅によって遺伝子発現ネットワークの進化を促し、ホストに利益をもたらしてきたために自然選択により保存されてきた」という仮説を検証する。 [計画]昨年度はT2-MITE由来配列(MDS)近傍遺伝子の探索を行ない、いくつかの遺伝子を同定した。そこで本年度は(1)これらのMDS近傍遺伝子の発現パターンの解析、(2)MDSを含むプロモータ領域の単離と発現解析用ベクターの構築、を計画した。 [成果]上記(2)の計画についてはニシツメガエルの系統的に離れた2つの純系(Nigerian系統、Asashima系統)からPCRによってプロモータ領域の単離を行なった。一方、ニシツメガエルのゲノムデータ解析をより詳細に進める中で、新しい事実が明らかになった。すなわち、T2-MITEは末端にAGGRR配列をもつものと従来考えられてきたのが、実は末端コンセンサス配列は必ずしもAGGRRとは限らず、他のモチーフをもつ場合もあることが判明した。そのため当初の計画を進めるにあたり、以前より広くT2-MITEの探索を行なっておく必要が生じてきた。そこで我々は以前開発したT2-MITEの検索・分類プログラムの改良を行ない、AGGRR以外のモチーフをもつT2-MITEについても幅広く検索が可能になる解析手法を開発した。この手法を用いてツメガエルおよび他のいくつかの動物において新しいT2-MITEのサブファミリーを同定することもできた。これらの成果は上記(1)(2)の計画をより着実に進めて行くための基盤となるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績概要に記したように、計画を進める中でT2-MITEについての新しい事実が明らかになり、より堅実に計画を進めるためには、その事実に基づいた新たなゲノムデータ解析を行なっておく必要が生じた。そこで戦略的観点からそのための新しい解析手法の開発に注力し、当初の実験計画の遂行は一時保留した。計画の完遂はできなかったものの、この解析手法を開発したことにより別方面での成果が得られ、また当初の計画についても今後より精密な形で進めることが可能になったため、全体としては順調だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果により、T2-MITEファミリーが従来考えられていたより広いスコープをもつことが明らかになったので、今後はこの知見にもとづいて、遺伝子発現ネットワークの進化に関与した可能性のあるT2-MITE由来配列の探索を再度おこない、その結果にもとづいて実験計画を再検討する。
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