研究課題/領域番号 |
22570213
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
宮川 勇 山口大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (50136165)
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キーワード | 酵母 / ミトコンドリア / 核様体 / DNA結合タンパク質 / Abf2p |
研究概要 |
分子系統樹において、パン酵母Saccharomyces cerviaeから遠く離れた酵母のミトコンドリアに存在するAbf2pホモログの多様性について研究を行った。パン酵母やヒトのAbf2pは、DNA結合ドメインであるHMGドメインを2つ持つのに対して、炭化水素資化酵母Yarrowia lipolyticaのAbf2pホモログはC末端側にひとつのHMGドメインを保持することを私たちは示している。そこで、Y.lipolyticaのAbf2pホモログの全長とN末端側およびC末端側をそれぞれ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として大腸菌で発現誘導させ、グルタチオンクロマトグラフィーによりほぼ単一バンドに精製した。これらのタンパク質を用いてDNA量に対して添加するタンパク質のモル比を一定にして、定量的にゲルシフトアッセイ、DNAセルロースクロマトグラフィー、スーパーコイル形成実験を行い、また蛍光顕微鏡観察によりDNA凝集能を観察した。その結果、いずれの発現タンパク質も環状DNA'にスーパーコイルを同程度形成することができるが、ゲルシフトアッセイではHMGドメインを含まないN末端側のほうが、HMGドメインを含むC末端側よりもはるかに強いDNA結合能を示すという興味深い結果を得た。また、明らかにN末端側部分がC末端側部分よりもDNAを凝集させる作用が強いことが分かった。進化的にはN末端側よりもC末端側でHMGドメインの保存性は高いが、N末端側に強いDNA結合性があることから、Abf2pホモログではN末端側半分とC末端側半分ではDNA結合性に関して異なる機能を有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Yarrowica lipolyticaのAbf2ホモログを全長,N末端側,C末端側に分けて大腸菌で発現精製し、定量的にDNA結合性を調べることで、構造的には明確なHMGDNA結合ドメインを持たないN末端側に強いDNA結合性があることを明らかにしたことで、Abf2pの多様性について新たな考察が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は主に酵母Yarrowica lipolytikaのAbf2pホモログの性質を明らかにしたが、N末端側DNA結合ドメインとC末端側DNA結合ドメイの機能的違いと多様性について、他種酵母Abf2pホモログに関しても一般性が成り立つかどうかを明らかにしていきたい。
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