研究課題
初年度は、触角節数多型が集団内で維持されているCrマメゾウムシにおいて、触角節数の遺伝様式と、自然選択に対する適応度が解明できた。さらに、種間比較により、触角節数多型に及ぼす系統の効果も明らかにした。触角節数多型は、同属のCsマメゾウムシの異なる集団でも確認できた。遺伝様式については、母性効果を強く受けることが明らかとなった。つまり、正常な触角節数の母親の方が異常な節数の母親よりも、子集団における正常個体の割合が高かった。一方、生涯適応度は、異常触角節数雌の方が正常節数雌より高く、また、雌雄ともに異常節数を持つペアで最も高く、正常節数雌と異常節数雄のペアで最も低かった。これは、触角節数減少に伴い、適応度が増加するため、節数異常の個体が集団から淘汰されないことを示す。予備的な調査では、細胞質不和合性を誘引しうる細胞内共生菌ボルバキアの関与は否定された。系統の効果を調査するため、まず核の28S領域を、Crマメゾウムシを含むセコブマメゾウムシ属14種および外群について塩基配列決定し、既存のmtDNAのCOI領域の配列(Tuda et al. 2006)と合わせて信頼性の高い分子系統樹を再構築した。次にこの系統樹上に、種ごとに触角節数異常の有無を形質配置したところ、アフリカ産マメゾウムシからなるクレードにおいて触角節数異常が複数回進化したと推定された。これは、触角節数異常の発生に系統の効果が一部寄与することを示す。
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