研究概要 |
転移後に機能を失った水平転移遺伝子の分子進化においては、アズキゾウムシゲノム上のボルバキア由来の転移ゲノム断片について、この転移ゲノム断片にきわめてよく似た実体のあるボルバキアゲノムの遺伝子の並びを元に、転移ゲノム断片の遺伝子の並びを、PCR法による確認を行った。現時点で転移が確認できている160の遺伝子を、3つの大きな転移断片にまでまとめることができ、その遺伝子の並びが推定できた。各々の転移断片には、23,89,46個の転移遺伝子がコードされていると予想される。これら3つの断片、及び残り2つの転移遺伝子のゲノム上の位置関係については、まだ同定出来ていない。また、挿入されているレトロトランスポゾンについては、これらの転移遺伝子間の塩基配列を決定することによって明らかにしていく。次に、転移後も機能を保持する遺伝子の分子進化に関しては、様々なアブラムシのサンプリングを行った。現在、7亜科36種を採取できた。これらのゲノムDNAを抽出し、5つの水平転移由来の遺伝子に対するプライマーを用いて、遺伝子の増幅を試みた。Lys遺伝子は、6亜科から増幅が見られたが、残りの4つの遺伝子では、プライマーをデザインした亜科Aphididaeに属する種以外からは増幅産物が得られなかった。得られた産物については塩基配列を行った。これらの新たに取得した塩基配列から、より特異的かつ異なる種からの増幅が可能なプライマーのデザインを行い、残りの4つの遺伝子について、異なる亜科に属するアブラムシゲノムからの増幅を再度試みる。
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