(1)配列解析(ERA法)による転写因子結合配列予測 データベース登録配列および予備実験で配列決定した海獣類哺乳類ゲノム配列を含むすべてのゲノム配列アラインメントを用いて、ERA法により哺乳類に特異的に保存しているモチーフを抽出した。哺乳類特異的な付属器官(毛胞)組織特異性を決定している因子である可能性がある5モチーフに変異を導入したI37-1コンストラクトをデザインした。これらにつき、順次PCRを行い、制限酵素で切断し、Tol2トランスポゼースによる組み込みを可能にするベクター(pT2A-HL)にクローニングを行っている。最初に作製した1.6kbのマウスI 37-1コンストラクトについて、トランスポゼースを用いて細胞質インジェクションを行ったところ、従来法よりもはるかに効率が良く、20%以上の効率でlacZを発現する胎児個体が得られた。これらの発現パターンは以前の実験から予想された結果と良く一致していた。以上により、この系が非常に有用であることが確認された。引き続き残りのコンストラクトを作製し、Tol2を用いたトランスジェニックマウス作製系で解析する。 (2)新規Dlx3-4遺伝子クラスター組織特異的エンハンサーの探索 公開されているゲノムデータベースに最近になって増えてきたヒストンコードのChIP-seq解析データを用いて、脊椎動物種間で保存性が高くはないが遠位エンハンサーとして働いている可能性がある領域を探索解析した。その結果、Dlx4遺伝子の上流に胎盤での発現に関与する可能性がある領域を発見した。Dlx4遺伝子は哺乳類胎盤形成において重要な役割を果たすことが判っている。今後この候補配列をトランスジェニックマウス系で解析し、そのエンハンサー活性と進化的成立過程を明らかにする予定である。
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