前年度までに作製したコンストラクトを用いて、トランスジェニックマウスをTol2トランスポゾンシステムによる細胞質注入法で作製し、生まれたマウスを系統化し、F1世代の発現解析をそれぞれ行った。この結果、(1)鰓弓特異的発現を引き起こすシス配列I37-2の活性を担う中心はDlx転写因子が結合する配列であることを確認し、このコア配列が進化的にも起源が古く、カモノハシにまで見いだされることを示し、さらにそのカモノハシ配列をトランスジェニックマウスで活性を解析したところ、コア配列の保存性にもかかわらず、鰓弓での発現活性は未だ備えていなかったことが明らかになった。以上は Journal of Experimental Zoology Part B: Molecular and Developmental Evolution誌に発表した(Sumiyama et al. 2012)。(2)四肢および毛包に発現活性を持つシス配列I37-1は大変起源が古く、四肢や毛包の起源より遙か以前、ナメクジウオとの分岐以前にまで遡る。このコア配列を含むナメクジウオ配列のエンハンサー活性をトランスジェニックマウスで調べたところ、神経板前方境界に特に強く発現活性を持つことがわかった。進化学的な解析から活性中心とみられた高度保存配列であるBMP反応性のシス配列モチーフGGCTCCAGCTAGTCTGに欠失変異を導入したトランスジェニックマウスでは、この神経板前方境界の特に強い発現活性が完全に失われていた。マウス由来i37-1配列においても高度保存BMP反応性シス配列モチーフの欠失は四肢での活性を失うことが示されていることから、このモチーフがコオプションによって四足動物で新たに四肢や毛包を発生過程で働く役割を持つようになったという進化的なストーリーが明らかになった。以上について現在投稿論文作成中である。
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