研究課題/領域番号 |
22570219
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉浦 秀樹 京都大学, 野生動物研究センター, 准教授 (80314243)
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研究分担者 |
下岡 ゆき子 帝京科学大学, 生命環境学部, 講師 (70402782)
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キーワード | 凝集性 / 社会構造 / GPS / 季節性 / ニホンザル / クモザル / 種間比較 / 個体間距離 |
研究概要 |
・群れの凝集性を保つメカニズムの解明 群れの空間的な凝集性は、霊長類の社会構造において重要な要素である。凝集性の高い群れを作ると考えられてきたニホンザルにおいても、群れの広がりはかなり変動することが分かってきた。つまり、活動や季節に応じて、群れの凝集性を調節している可能性が高い。しかし、社会的な群れを作る動物が、どのように行動して群れの凝集性を保っているのかについては実証的なデータはあまりない。 本研究では、ニホンザル野生個体群を対象に、複数観察者による成体メスの二個体同時追跡を行い、二個体間の距離や相対位置を、秋・冬・夏の3季節で記録した。また、各個体のコンタクトコールの回数を1分ごとにカウントした。 二個体間の距離が近い時には平行に移動する程度が増した。平行性は、移動速度の差と移動方向の差を変数として評価した。いずれも、個体問距離が近いほど、平均値が小さく、近い距離にいる二個体は、移動の同調性が高いことが分かった。一方、個体間距離の変化を見ると、2個体間の距離が離れる程、その10分後には個体間距離が短くなっていた。つまり、大きく離れると、凝集しようとする傾向があった。群れの凝集性の維持に関与すると考えられているコンタクトコールは、個体間距離が大きく離れた時に、顕著に高くなった。 平行移動や接近、およびコンタクトコールは、凝集性の高い季節に顕著であることから、これらの行動が凝集性の維持に関与している可能性が高いと考えられる。また、個体間距離が100m以上離れるような場合でも、2個体間の動きは無関係にならず、より接近することが分かった。100m以上離れた個体を、直接、参照しているとは考えにくく、ニホンザルは、群れの全体的な広がりを把握して、自分の行動を調整していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
群れの凝集性のメカニズムの解析はほぼ終了した。クモザルとニホンザルの比較については、来年度に進められる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
種間比較の解析を集中して進め、成果を発表していく。
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