・ニホンザルとクモザルの群れの空間構造の比較 クモザルの群れの凝集性のデータを、ニホンザルと比較可能な形で分析した。群れとしてまとまっている時と、分派している時の2個体間の距離のパターンは、両種で似通っていた。離合集散するクモザルでも、群れとしてまとまっている時は、ニホンザルのように凝集性の高い種と同じようなメカニズムで群れの凝集性を保っている可能性が示唆された。一方、クモザルでは、片方のパーティが一方的に離れていくこともあり、分派が始まる時の動きが異なるかもしれない。 ・ニホンザルの群れの凝集性を保つメカニズム ニホンザルは周辺の数頭の動きに反応して、他個体との距離を調整していることが、解析の結果、明らかになった。しかし、それだけでなく、40m以上離れた個体の動きとも、関連があり、群れのおおよその位置を把握して、自分の動きを調節している可能性が、示唆された。特に、群れの周辺部にいる可能性が高い場合には、コンタクトコールという音声の頻度が上昇した。ニホンザルは、少なくとも、群れの周辺部にいるかどうかを、認識しており、周辺部にいると音声を頻繁に出したあと、群れの中心に向かって移動している可能性が考えられる。
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