現代人抜去歯において、非齲蝕性歯頸部硬組織欠損(Non Carious Cervical Lesions 以下NCCL)の、有無、発現歯種、発現部位、形態、を調べた。観察歯種は、中切歯から第2大臼歯まで、上下顎左右側、合計6572本である。肉眼観察と10倍ルーペによる観察を行った。その結果、NCCLは犬歯と第一小臼歯で最も出現頻度が高く(40~60%)、近心と遠心に向かうにつれて頻度は低くなり、第2大臼歯では頻度は10~30%だった。ほとんどの歯種で、NCCLは 頬側(唇側)に最も高頻度に現れたが、上顎第2大臼歯では舌側に最も高頻度で現れた。形態は、表面の輪郭(弦、横長、縦長、帯、不定形)と断面の形態(円形、楔、平滑、不定形)で分類した。表面の輪郭で最も多かったのは円形、次いで楔形であった。断面の形態で最も多かったのは弦、次いで横長と縦長が多かった。表面の輪郭と断面の形態の組み合わせで最も多かったのは弦・円形、次いで、縦長・円形、横長・円形、弦・楔、が多かった。NCCLの形態の出現頻度は、歯種によって偏りが見られた。表面の輪郭に関して、縦長は前歯に多く、横長は大臼歯に多かった。弦はどの歯種でも多かったが小臼歯で比較的多かった。NCCLの形態の出現頻度は、歯の部位によっても偏りが見られた。表面の輪郭に関して、弦は 頬側(唇側)に多く、縦長は舌側に多く、横長は近心側と遠心側に多かった。断面形態に関しては、円形がどの面でも多かったが、楔は 頬側(唇側)に特徴的だった。まとめると、前歯の舌側には、縦長・円形タイプが多く、小臼歯の 頬側には弦・楔タイプが多く、大臼歯の近心面と遠心面には、横長・円形タイプが多かった。歯種や歯の部位によって、現れるNCCLの形態が異なることから、NCCLの成因として、いくつかの異なった成因が考えられる。
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