研究概要 |
平成23年度は,現地調査と,そこで得られた資料の分析と,論文執筆を行った. 平成23年7月中旬から9月中旬に,東アフリカのタンザニア共和国西部のサバンナウッドランド地帯で現地調査を行った.主な調査地としたウガラ地域のングェには,昼行性霊長類の内チンパンジー,アヌビスヒヒ,アカオザル,ブルーモンキーが生息していた.また,短期間訪れたカロブワ地域のルバリシには,キイロヒヒ,サバンナモンキー,アカコロブスも生息していた.ングェの調査地内にトランセクトラインを設けて植物と動物のセンサスを行った結果,同地域のサバンナウッドランド(乾燥疎開林)には乾季に落葉する樹高約20mの樹木がまばらに生え,林床にはイネ科草本が生えていた.このサバンナウッドランドが面積の大半を占め,数%の面積割合で川辺林等の常緑林や草地が点在していた. さらに,このトランセクトラインを用いて,平成22年年9月から平成23年年8月までの1年間に,現地の調査助手に果実や葉の季節変化を2週間に1度記録してもらった.現在,この資料を用いて,サバンナウッドランド地帯の樹種構成を整理すると共に,樹木の果実や葉の季節変化を分析中である.また,チンパンジーの生息する環境を,発見ベッドの分布と衛星画像および地形図から,GISを利用して分析した.その結果,チンパンジーのベッドは常緑林の多い地域に多い事が明らかになった.常緑林内のみで発見されるアカオザルとブルーモンキーのみならず,チンパンジーの生息にも常緑林の有無が影響していたわけである.しかし,チンパンジーのベッドは傾斜がある地域に多くある事も発見され,今後さらなる分析が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,前年度に引き続いて現地調査を実施して植物と動物のセンサスを行い,平成22年9月から平成23年年8月までの1年間にわたる植物の季節変化を記録する事ができた.さらに,チンパンジーに関しては,発見ベッドの分布と衛星画像および地形図からGISを利用して,彼らの生息要因を分析する事が出来た.
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今後の研究の推進方策 |
現地の動物相や人間活動については,さらに資料を収集するために,平成24年度も現地調査を実施する.その後,これまでの現地調査で得られた資料と,衛星画像および地形図を基にして,GISを利用した分析をさらに推し進める予定である.本研究課題の最終年度となる平成24年度には,チンパンジーをはじめとする各種霊長類の生息要因を解明し,研究の取りまとめも行いたい.
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