研究課題
我々は、一般に、ひと目その形態を見ただけで、それがヒトであるか否かを識別することができる。恐らく、それは、ヒトと言われる動物の形態の変異に規則性と限界があるからだろう。その規則性と限界の原因を明らかにすることを目指して、まずは新石器時代以降の人類集団の頭蓋・四肢骨計測値について、これ以上はヒトではあり得ない、という各変数の変異の限界、ならびに複数の変数の変異の規則性すなわち共変動性の方向、程度、限界などを客観的に見極めたい。これが本研究の目的である。上記の目的を達成するために、世界中の新石器時代以降の人類集団について、頭蓋・四肢骨計測値の平均値を文献調査によって収集し、最後にそれら計測値の変異の限界および共変動の規則性を、主成分分析法、正準相関分析法などを使って調べるつもりであるが、本計画2年目の平成23年度は、以下のように研究を進めた。まず、データ収集は、初年度に引き続き、日本の縄文時代から現代までの人骨ならびにヨーロッパ・中国・南北アメリカなどの遺跡出土人骨を中心に行なった。そして、初年度に構築した手書き文字OCR(Optical Character Reader;光学式文字読取装置)に基づく半自動入力システムに入力すべき計測値のデータシート作成をこの平成23年度に開始し、現在も継続している。また、本研究計画をより正確に行なうための準備的分析として、南北アメリカ先住民とオーストラリア更新世人類の頭蓋計測値を使って、脳頭蓋の人工変形による影響が頭蓋のどの部分に及ぶのか、ということを見極めるための検討を行ない、その具体的な部位を示した。人工頭蓋変形の風習はかつて世界各地にあったが、自然の形態変異のみの分析を行なうためにも、頭蓋形態変異の原因探求のためにも、このような現象の実態を把握しておくことは非常に重要である。
2: おおむね順調に進展している
文献の追加収集自体はコンスタントに続けているので、その点は順調と言えるが、文献からコンピュータに入力すべき計測値を引き写してデータシートを作成する、という作業が若干遅れ気味である。ゆえに、「おおむね順調」と言わざるを得ない。
上記データシート作成作業を次年度にはもっと集中的に行なう努力をする。データ入力さえできれば、統計分析のためのプログラム等は整っているので、研究計画の変更や研究遂行上の問題はない。
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Anthropological Science
巻: 119 ページ: 99-111
DOI:10.1537/ase.090330
Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series D
巻: 37 ページ: 1-33