昨今の医療現場ではいずれの診療科においても、ストレス関連疾患、心身症、機能性疾患などの割合が増加し、その対応が問題となっている。身体疾患を呈するがその主観的訴えと客観的評価の間に乖離が大きい一連の疾患群はFunctional somatic syndrome (FSS; 機能性身体症候群)と呼ばれている。FSSでは通常の医学的検査で異常が認められず、医学的アプローチが奏功しにくく、医療現場の混乱を招き、医療経済的損失も大きいため、病態の解明と対応方法についての検討が求められている。 本研究では、FSSの病態のうち、ストレスに対する自律神経系機能に関連する指標の反応をみる「精神生理学的ストレス・プロファイル」のFSSにおける特徴を検討し、心理テストを用いた心理的評価と併せた病態仮説の構築と、それを基にしたFSSへのアプローチについての提唱を行うことを目的としている。 平成22年度は、研究計画に基づき、FSS患者群と健常対照群を対象に、精神生理学的指標のストレス負荷前後のデータ測定と心理テストの記録を行った。患者群については50例、健常群については30例のデータ測定を実施した。そのデータの整理、解析準備を行うとともに、現在も測定を継続中である。 また、心理テストでは捉えきれない非言語的レベルの心理的病態を評価するため、半構造化面接を用いた、患者像や身体症状についての面接の検討を行った。その結果、身体症状インタビューの枠組みを作成した。今後はこれに基づき、上記の定量データと併せて、質的評価を試みる予定である。
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