研究概要 |
立位姿勢での動的な多関節運動において,姿勢調節に参画する筋が疲労した場合,他の姿勢協同筋が補償し平衡保持を図ることが予測されるが,その機序はいまだ明らかではない.この姿勢協同筋の補償機能は,とくに高齢者の安全な生活遂行能力(転倒予防)の確保にとって重要である. 安静立位から片上肢の前方挙上による錘の投球動作を実施し,その際に姿勢筋である前脛骨筋を疲労させ姿勢協同筋の回復様相をみると,疲労直後に疲労姿勢筋の活動は消失し,替わって協同筋である大腿二頭筋や脊柱起立筋の有意な活動増大が認められ,姿勢協同筋の補償機能の存在が確認された(平成22年度).平成23年度は,若年成人22名を被験者とし,近赤外分光法(NIRS)を用い,疲労回復中の前脛骨筋の酸素動態を筋電図と同時記録した。被験者個々で姿勢筋の疲労回復時間(姿勢筋活動の出現時間)は異なったが,被験者各々の前脛骨筋における筋内酸素濃度の回復と姿勢筋としての再活動開始時間が符合した.一方,水泳選手群は疲労回復中の再酸素化時間が6分以上経過したのに対し,投球動作に習熟しているソフトボール選手群は15秒程度であった.疲労困憊後の局所骨格筋の再酸素動態は,クレアチンリン酸動態と一致することが示唆されており姿勢協同筋適応能は習慣的に実施する運動の種類に影響を受けることが示唆された.
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