研究概要 |
本研究の目的は,被験者の姿勢筋を疲労させた後,立位姿勢から2kgの錘をアンダーハンドで前方へ最大努力での投じた時の投速度と先行随伴性姿勢調節(anticipatoryposturaladjustments;APA)の回復様相についてみようとするものである.健康な被験者が,30%MVCの挙上重量を用い,等張性足背屈動作を疲労困憊まで実施し,前脛骨筋(TA)の疲労前・後にそれぞれ最大努力の投球動作を実施した.疲労動作課題直後のTAのEMG活動は投動作中に消失したが,姿勢協同筋の脊柱起立筋と大腿二頭筋のEMG活動量は,それぞれ増大した(各々P=0.007,P=0.272).これら姿勢協同筋の疲労に伴う変化は,45秒の回復時間でベースラインに戻り,低下していた投速度も225秒の回復時間を経て疲労前の運動成果に戻った.これら姿勢協同筋群の活動パターンは,疲労で損なわれたTAの筋活動を補償する,いわゆる"筋交替活動alternatemuscleactivity"と考えられた.以上のことから,上位中枢機構は疲労困憊した姿勢筋を休止させ,他の疲労していない姿勢協同筋を選択的に賦活させることで,高いレベルの運動成果と姿勢平衡を保つ事を意図していることが示唆された.
|