近年、生活習慣病が増加し疾病構造の中心的位置を占めるようになった。これら疾病の予防には、幼児期における食環境や食育が強く関連している。そこで食育のプログラムを幼児や児童に実施することにより、どのような影響がその後の幼児や児童の味覚識別能、生理機能や肥満や行動に現れるかについて検討している。この調査地域は、日本大学短期大学部のある三島市北地区の幼稚園・小学校・中学校である。この調査は、日本大学医学部倫理委員会の承認を得ている。今回は食育プログラムのうち「味覚教育」を対象者に合わせて行った。介入前後の食習慣・食行動調査は、研究代表者の指導のもと、園と学校の職員が協力して行った。このプログラムには、学校栄養教諭と行政の栄養士も協力した。 その結果、口頭では応えられないが「何かわからない味がする」場合を刺激閾、その味の表現ができたところを認知閾として測定した結果、教育前の平成22年度には、幼稚園児・1年次・2年次・3年次共に、男女共4味質(甘味・塩味・酸味・苦味)において検知閾値と認知閾値の間には有意な差がみられた。このことは、「何の味かわからないが感じてはいる」が各味質を認識できていないことを示す。しかし1年から2年になるにつれ、甘味認知閾値、酸味認知閾値、苦味認知閾値は有意に鋭敏となり、これら3味質を識別できるようになった。4年次と6年次では、苦味において検知閾値と認知閾値の間には有意な差がみられなかった。このことは、苦味の刺激と認識とが同じになってきたことを示す。この検知閾値と認知閾値の間の差は、学年が上がるにつれて少なくなってきた。次に中学校においては、1年から3年にかけての検知閾値・認知閾値の変化値はプラスに変化するとともに3年次の味質段階は下がっている。このことは味覚識別能が鋭敏になってきていることを表わしている。今後は、この検査結果と家庭環境との関連をさらに深く検討していく.
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