研究課題
本課題研究に先立ち、報告者は、南米全土におよぶ純粋なモンゴロイド系少数民族の血液検体よりB細胞株500個体分を樹立した。血液検体は有限の研究材料であり、そのまま使用すればすぐに尽きてしまうリソースである。報告者が樹立した南米検体にはすでに滅亡し収集しなおすことのできない部族等も含まれており、B細胞株の樹立は、尽きることのない遺伝資源を確保するために非常に重要である。B細胞株は長期間培養後でも正常な染色体核型を保持することが知られており、ゲノム構造を安定に保つと考えられてきた。しかし、B細胞株のゲノム安定性に関して高解像度で網羅的なゲノム解析はこれまでにほとんど行われておらず本研究課題のような遺伝学的解析にB細胞株を使用することを不安視する研究者も多いことから、昨年度はマイクロアレイを用いてB細胞株の網羅的なゲノム安定性解析を行い、B細胞株樹立過程で発生したと考えられるリアレンジメントはほとんど検出されずB細胞株の遺伝資源としての有用性を示した(Danjoh et al.,2011)。この結果を受けて昨年度から今年度にかけて、法医学的マイクロサテライトマーカーおよびY染色体上の法医学的マーカーのデータ取得を行い人類遺伝学的類縁関係の解析を開始した。この解析の過程でモンゴロイドではこれまでに報告されていない多型パタロンが検出された。これらの多型領域に関してはゲノムDNA塩基配列レベルでも解析を進める必要があると考えている。
2: おおむね順調に進展している
南米先住民族のマイクロサテライトデータの取得が順調に進み、人類遺伝学的解析も開始している。解析の過程で新規の発見もあり、今後の展開に期待が持てる。
交付申請書に記載したとおり、マイクロサテライトデータを用いて人類遺伝学的解析を進める。マイクロサテライトの繰り返しパターンで興味深い領域が検出されていることから、当初の計画には含まれていなかったが、このような領域についてはゲノムDNAの塩基配列レベルでの解析も行う予定である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Genome Biology and Evolution
巻: 3 ページ: 272-283