研究概要 |
本研究の目的は、組織培養が非常に難しい作物であるテンサイ(サトウダイコン)の培養適性向上である。アグロバクテリウムを介した遺伝子導入に耐えうるような,カルス化から植物体再分化までの一連の組織培養が可能なのは唯一テンサイ系統NK-219のみであるが,この性質がいかなる機構に基づいているのか明らかではない。 1.北海道農業研究センター育成の5系統と、それらの間で片側ダイアレル交配を行ったF1系統10材料を用い、葉片培養におけるカルス形成率およびカルスからの再分化能に関するダイアレル分析を行った。その結果、カルス形成率では、広義の遺伝率、狭義の遺伝率ともに高い値を示し、相加効果と優性効果が同程度に寄与することが明らかとなった。また、優性遺伝子はカルス形成率の高い方向に作用し、完全優性を示すことがわかった。再分化成績に関しては、広義の遺伝率、狭義の遺伝率ともに高い値を示し、優性効果に対して相加効果の方が強く働くことが明らかとなった。また、優性遺伝子は再分化成績を低くする方向に作用することがわかった。カルス形成率と再分化の良否の間に相関はなかった。 2.ダイアレル分析の過程で、カルス形成率はNK-219に匹敵するが、植物体再分化能が見られないNK-239xNK-294を発見した。そこで、再分化に関与する遺伝子を単離することを目的として、再分化培地に置床したNK-219由来のカルスとONK-239xNK-294のカルスを材料に用いてcDNAサブトラクションライプラリーを作成した。いくつかの遺伝子が、特異的に発現するという予備的なデータを得ている。
|