研究課題/領域番号 |
22580005
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
富田 因則 鳥取大学, 農学部, 准教授 (70207611)
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キーワード | ムギ類 / トランスポゾン / 進化 / 構造変異 / 発現量 / イスラエル / 環境 |
研究概要 |
新規のトランスポゾン様遺伝子Revolverはライムギ属、Dasypyrum属などパンコムギの改良に有用な資源植物には多数存在する一方、栽培種パンコムギには極めて少なく、種間で量的に大きく変動している。Revolverがどのような環境条件で増幅してきたのかを検討するため、イスラエルのエボリューション・キャニオンにおける、温暖で乾燥したアフリカ型斜面、冷涼で湿潤したヨーロッパ型斜面にそれぞれ自生し、劇的に異なる環境に曝されているオオムギ野生種Hordeum spontaneumのアフリカ型斜面の46系統、ヨーロッパ型斜面の51系統を供試し、Revolverの構造と発現を調べた。まず、RevolverのTIRをプライマーにしてH. spontaneumのゲノムDNAでPCRを行った結果、0.2~4kbにわたる11個の多様なRevolverが検出された。次に、H. spontaneum各系統の根からRNAを供抽出し、RevolverのcDNAの両末端をプライマーにしてRT-PCRを行った結果、ヨーロッパ型斜面の系統ではRevolverの標準的な0.7kbの転写産物が一定に検出されたが、アフリカ型斜面の系統では通常存在しないないRevolverの1~2kbの複数の転写産物が検出されたうえ、系統間で大きさが変異していた。さらに、リアルタイムPCRでRevolverの発現量を比較した結果、ヨーロッパ型斜面のH. spontaneum系統はアフリカ型斜面の系統に対して1.7倍強く発現しており、H. spontaneum種内で環境によるRevolverの遺伝的変異が示唆された。また、ライムギから第2イントロン以降が共通するRevolverの多様な5'側構造変異体が検出され、エンメルコムギでは湿潤温暖地域でRevolverのコピー数が多く、乾燥地域では少ないなど、最近の増幅活性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コムギの起源地イスラエルの多様な生態系に由来し、遺伝的変異に富む野生オオムギHordeum spontaneumとエンメルコムギのコレクションにおいて、トランスポゾン遺伝子の消長と構造の差異が見出された。ライムギで発現しているトランスポゾン遺伝子のmRNA構造を解析し、5'側に特に大きい構造変異が見出された。
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今後の研究の推進方策 |
完全長を持つcDNAライブラリーを作成し、発現しているトランスポゾン遺伝子のmRNA構造を決定する。さらに、イネゲノムには存在しないトランスポゾン遺伝子をアグロバクテリウム法でイネゲノムに形質転換し、その動態と形質発現効果を解明する。また、トランスポゾンに由来し、遺伝子の転写産物に作用して翻訳を制御しうるヘアピン型のマイクロRNAのクローニングを試みる。
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