研究課題
本年度の研究では、昨年得られた小胞体型ω-3脂肪酸不飽和化酵素をコードするGmFAD3-2a遺伝子に変異を生じた突然変異体A9系統について、変異遺伝子の機能解析を進めた。その結果、このA9系統では2411塩基目のCがGに置換しており、289残基目のセリンのコドンがアルギニシに変化している他、異常なスプライシング産物も観察された。そこで、これら2種類の変異型および野生型のGmFAD3-2a mRNAを鋳型としてcDNAを合成し、酵母発現ベクターpYES2/CTに組み込んでINVSc1株に導入した後、小胞体型ω-3脂肪酸不飽和化酵素の基質となるリノール酸を加えた培地中でこれらの組換え酵母を培養し、ガスクロマトグラフィーによって脂肪酸組成の分析を行った。その結果、野生型GmFAD3-2a cDNAを組み込んだ酵母では、GmFAD3-2a遺伝子がコードする小胞体型ω-3脂肪酸不飽和化酵素産物と考えられるα-リノレン酸のピークが検出されたのに対して、2種類の変異型cDNAを組み込んだ酵母ではいずれもこのピークは検出されず、A9変異体中で活性のあるGmFAD3-2a遺伝子産物は生成されないと推測された。更に、このA9突然変異体と以前に我々の研究室で開発されていたGmFAD3-1a.およびGmFAD3-1bの二重突然変異体であるHOLL系統を交雑し、そのF1個体を自殖させてF2種子を得た。この他、TILLING法によって、新たに複数のステアロイル-ACP不飽和化酵素遺伝子の突然変異体も得られており、今後の解析が待たれる。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、複数の新規脂肪酸合成突然変異体を得ることに成功しており、個々の変異遺伝子の機能解析はもとより、これらの変異遺伝子を複数組み合わせた際の効果棟についての知見を得ることにも成功している。
今後は、アシルーACPチオエステラーゼやステアロイルーACP不飽和化酵素の機能評価に必要となる、大腸菌中での組換え酵素発現系の確立を早急に行い、残る突然変異体の機能解析を進めて行く必要がある。
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