研究概要 |
ダッチアイリスの品種、ブルーダイヤモンドにおける外花被含有アントシアニンをHPLC分析するとともに、精製したアントシアニン成分はLC-MS分析を行った。まず、デルフィニジン3-(p-クマロイルルチノシド)-5-グルコシド(Dp3pCRG5G)が同定された。また、分子量からデルフィニジン3-(カフェオイルルチノシド)-5-グルコシド(Dp3CRG5G)、マロニルDp3CRG5G及びマロニルDp3pCRG5Gが推定された。このように、p-クマル酸とマロン酸の2種類の有機酸によるポリアシル化アントシアニンが推定されたのはアヤメ属では最初である。次に、ブルーダイモンドにおけるアントシアニン生合成に関与するカルコンイソメラーゼ(CHI)、フラボノイド3'5'ヒドロキシラーゼ(F3'5'H)、3-ラムノシルトランスフェラーゼ(3RT)及びアントシアニンマロニルトランスフェラーゼ(AMT)遺伝子の単離を試みた。その結果、単離されたIhF3'5'Hは他植物種のF3'5'Hと高い相同性を有するほぼ全長のcDNAクローンであり、1,347bpで構成され、350のアミノ酸をコードしていた。そこで、IhF3'5'Hと他植物種F3'5'Hとの間で推定アミノ酸配列を比較したところ、IhF3'5'HはシトクロムP450に特異的なヘム結合領域及びF3'5'HのC末端側に5'位の水酸化に重要なセリン残基を保存しており、花蕾や花での遺伝子発現も確認されたことから、F3'5'Hの機能を有することが示された。また、単離されたIhCHI1及びIhCHI2の2cDNAクローン断片は、既知遺伝子との推定アミノ酸配列の比較によりナリンゲニン結合残基を有していたので、両cDNAクローン断片はCHIホモログであると推定した。これに対して、3RT及びAMTの両遺伝子はcDNAクローンを単離するまでには至らなかった。
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