研究課題
カドミウム(Cd)は人体に有害な重金属で農耕地に蓄積している。Cd汚染土壌の浄化法として、植物を利用してCdを除去するファイトレメディエーションが注目されている。この方法にはCdを多量に蓄積できる植物の育成が不可欠であるが、植物がCdを吸収、蓄積する機構は明らかでない。本研究では、イネの地上部へのCd移行に関与する遺伝子として同定したOsHMA3の機能解析を行うことによりイネのCd蓄積機構を解明することを目的としている。本年度は、OsHMA3の発現解析と酵母発現系によるOsHMA3のCd輸送機能の解析を行った。OsHMA3はイネの葉と根で発現し、根でより発現量が高かった。さらに、レポーター遺伝子(GFP)を用いて細胞内のどこにOsHMA3が存在するかを解析したところ、OsHMA3が液胞膜に局在していることが明らかとなった。OsHMA3は2価の重金属の膜輸送体に分類されることから、OsHMA3が2価の重金属を液胞内へ輸送する役割を担っており、Cdの地上部への輸送にも関与しているものと考えられた。次に、酵母変異株を用いてOsHMA3のCd輸送機能を解析した。液胞にCdを輸送するYCF1が機能喪失したCd感受性変異株において、OSHMA3はYCF1の機能を相補し変異株のCd感受性を低下させた。このことからOsHMA3がCdを液胞内へ輸送する膜輸送体であることが明らかになった。一方、Cdの高移行イネから単離した変異型のOsHMA3はCdの液胞への輸送機能が喪失または著しく低下していた。すなわち、OsHMA3はCdの液胞への膜輸送体であり、その機能喪失によりCdが根の液胞に輸送されず地上部へと移行して高蓄積するという、イネのCd蓄積機構の一端が明らかとなった。
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New Phytologisit
巻: 189 ページ: 190-199