以下の(1)~(3)のリン酸欠乏ストレスおよび酸性耐性関連形質について、遺伝子単離に向けた研究をそれぞれの準備状況に応じて進めた。 (1) 「リン欠乏ストレスによって誘導される根の伸長(REP)」については、インディカ品種Kasalathの持つREP形質を制御する染色体6長腕の遺伝子座の絞り込みを進めた。F_4分離集団を用いた領域の絞り込みにより、REP形質の座乗推定領域をヘテロに持ち他の根バイオマス関連の遺伝子座領域をホモに持つ系統で、有意な分離が観察された。また、絞り込んだ領域中に存在する候補遺伝子の一つに、リン欠乏ストレスによって発現が誘導される転写因子がみつかり、その日本晴のコード領域の過剰発現および機能抑制した遺伝子組換えイネでREP形質との相補性が確認できた。 (2) 「リン欠乏ストレスよって誘導される酸性ホスファターゼ(APase)活性の誘導」については、コシヒカリ染色体部分置換系統を用いた形質マッピングを行った。染色体8のゲノム領域がKasalathに置換した系統は、有意に高いリン欠乏ストレス誘導性のAPase活性を示し、これは以前のQTL解析の結果と対応していた。この遺伝子の詳細マッピングに向けて、置換系統とコシヒカリの交雑種子を得ることもできた。 (3) 「pH3.0~3.6の酸性水溶液培下での根の伸長阻害に対する耐性」については日本晴(耐性)とKasalath(感受性)のF_3集団で検出した染色体2のQTLを確認するため、日本晴/Kasalath//KasalathのBC_1F_2のうち耐性形質が分離する集団を選び、QTL解析を実施中である。また染色体2がKasalathに置換した感受性系統と日本晴との交配種子を得ることできたので次年度にマッピングする。
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