1.研究の概要 平成24年度は,4段階の栽植密度区を設けて圃場試験(平成23年11月~平成24年6月の予定)を実施する予定であったが,発芽不良のためやむなく試験を中止した.平成24年5月~7月に栽植密度の圃場試験を再度実施し,秋まきコムギ本来の生育時期ではないが,栄養成長期間における分げつ数の推移と群落内の光質との関係を調査した.さらに,昨年度実施予定であった試験を平成24年11月から再度実施中である.今回の試験では発芽や生育のいずれも良好で,試験データも順調に得られており,平成25年6月に栽培試験を終了する予定である. 2.得られた結果の概要 平成24年5月に播種し,栽植密度を267,133,67,40個体 m-2に設定した.茎数と葉齢を週2回調査し,晴天日に群落内の光質(R/FR)を測定した. 播種後20日頃から処理区間の茎数差は拡大し,個体当たりの最大茎数は密植から疎植になるほど増加(13.6,18,31,46.2本)した.最大茎数に達した時期は播種後40日前後であった.R/FR比は疎植ほど高く推移し,生育が進行するほど処理間差は拡大した.いずれの処理区も播種後30日頃からR/FR比は大幅に低下した.栽植密度が低い群落ほどR/FR比が高く,茎数が増加した.疎植区ほど相対分げつ増加率と出葉速度の転換点が密植区に比べて遅くなり,分げつの増加がより主茎葉齢の進んだ時期まで継続するために茎数が増加したことが明らかとなった.播種後35日前後での相対分げつ増加率の低下が,R/FR比の大幅な低下時期とほぼ一致していることから,分げつ増加に対するR/FR比の影響が示唆された. なお,平成24年11月から開始した試験は現在継続中で,平成24年春に実施した試験と同様の傾向を示すより詳細な試験データが得られている.
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