研究概要 |
1.中国産多収性水稲の窒素吸収および収量性に及ぼす緩効性肥料の施用効果 中国揚子江下流域に位置する江蘇省は,中国屈指の水稲栽培地帯であるが,多施肥栽培が行われており,窒素(N)肥料の平均施用量が300kg/haにも達する.そのため,余剰成分の流失による周辺水域への環境負荷が懸念されており,施肥N利用効率の向上が必要である.本研究では,(1)施肥に関する情報を現地で収集するとともに,施肥法の違いが田面水の水質に及ぼす影響を調査した.(2)江蘇省で栽培される多収性水稲品種は,大穂あるいは密穂でシンク容量が大きく,高い収量性を有し,N吸収量が高いことが報告されている.これらの品種のシンク容量を高め,施肥N利用効率を向上させる手段として,緩効性肥料の施用が考えられる.中国産多収性水稲品種におけるN吸収および収量性について,緩効性肥料の施用効果と品種特性を明らかにした.その結果,緩効性肥料の施用は中国産多収性品種のN吸収およびシンクサイズの形成に有効であった.中国産多収性品種は高N含有量でもN利用効率(NUEg)の低下が小さく,多肥条件に適することが示された 2.節水栽培条件下における中国産水稲品種の収量および水生産性の評価 中国北西部では降雨量の減少や工業用水の増加により水不足が深刻であり水稲栽培面積が減少しつつある.水の効率的利用のためには節水栽培条件下における品種特性を明らかにする必要がある.そこで,(1)水稲栽培,特に水管理に関する情報を現地で収集するとともに,節水栽培法について検討した.(2)節水条件下で栽培した中国産水稲品種の給水量および水生産性(収量/給水量)を明らかにし,それらが収量に及ぼす影響を検討した.その結果,給水量と水生産性の間には湛水区および節水区ともに有意な負の相関関係があり,節水栽培による水生産性の低下が認められたが,いくつかの中国産品種では節水栽培により給水量を抑制することができ,かつ,水生産性が高まる傾向を示すことが明らかとなった
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