稲作とともに日本国内に拡がったとされる稲作随伴雑草タイヌビエを研究対象として、葉緑体非コード領域DNAの広域シークエンス分析(約7000bp)を行い、日本国内および近隣諸国におけるタイヌビエの遺伝的類縁性を明らかにする。さらに、得られた変異をSNPS法で検出する方法を開発し、日本および近隣諸国の多数(約250地点)のタイヌビエの地理的遺伝変異を分析する。稲作随伴雑草タイヌビエが本当に稲作の伝播とともに日本に侵入し、拡散したのかという雑草学における根本的問題の解明を目指す。 初年度となる本年度は、まずタイヌビエが未収集である福島県、群馬県、栃木県、茨城県などの南関東地域と南九州地域(鹿児島県と宮崎県)においてタイヌビエを収集した。収集時には水田の管理状況や緯度・経度・高度を記録した。また、大阪府立大学(申請者の出身大学、2000~2001年にタイヌビエの研究を行う)にタイヌビエ種子の分譲を依頼し、外国産の材料を入手した。次に、葉緑体DNAのイントロンおよび遺伝子間領域を増幅するためのプライマーを20セット設計し、そのプライマーでのDNA増幅の有無を確認し、葉緑体DNAの広域シークエンス分析(約7000bp)が行える体制を整えた。さらに、DNAの増幅が確認できた領域については塩基配列を15系統のタイヌビエと1系統のイヌビエについてシークエンス分析によって解読した。タイヌビエの葉緑体DNAには種内変異があることを見つけた。
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