研究概要 |
カナダで発見されたソバの菊型系統は,生育初期に側枝が地表面付近から発生して水平方向に伸長し,葉が地表面を覆い,生育後期には側枝の伸長方向が垂直方向に変化して開花結実するという特徴的な草姿を持つ.この系統は,早期に植物体が地表面を覆うことで雑草の発生を防ぐと考えられるため,減農薬を可能にし,食の安全を推進でき,農業上有益と考えられる.しかし,この草姿はカナダでは発現するが,日本の関東地方では発現せず,草姿の発現が環境によって変化すると考えられ.そこで,本研究は菊型の草姿が発現するために必要な環境条件を明らかにすることを目的とした.平成22年度は人工光で17時間日長になるように補光すると,12時間日長下と比べて,主茎下部に2cm以下の短い節間が多くなって地表面近くから多くの枝が発生するようになり,側枝の発生角度が大きいため側枝発生方向が水平に近くなり,菊型草姿に近くなることが明らかになった.温度に関しては,昼20℃で夜15℃の低温条件より,昼28℃で夜23℃の高温条件のほうがこれらの傾向を強くした.しかし,高温下では葉が小さくなるなど側枝以外の形質がカナダで観察した菊型草姿とは異なる傾向であった.そのため,高温が菊型草姿を発現させるとは断言できなかった.ただし,葉の大きさなどを測定していなかったためにあくまでも観察のレベルであった.次年度以降,側枝の発生状況だけでなく,葉の大きさも測定項目に入れて,日長時間を16から18時間まで延長した場合,および昼夜の気温をさまざまに設定した場合など,日長時間および昼夜の気温の影響をさらに詳細に検討する予定である.
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