研究概要 |
1 イネ品種中生新千本/密陽23号由来組換え近交系8系統を用いて水田で通常栽培し,成熟後,比重1.00以上の穎果の割合である精籾歩合を系統間で比較した.その結果,良登熟型遺伝子.AS2-2およびSUT1-2をもつ系統は,非良登熟型遺伝子AS2-1および、SUT1-1をもつものに比べ,穂全体の精籾歩合が高いことがわかり,これら良登熟型遺伝子の登熟向上効果が確認できた.ただし,2次枝梗上穎果については有意差は認められなかった 2 同じ材料を用いて,出穂開花後の粒重増加速度を測定したところ,やはり,上記の良登熟型遺伝子をもつものはもたないものに比べ,粒重増加速度が速くなることが確認できた 3 同じ材料を用いて,出穂後10日目の発育胚乳におけるADPグルコースポロホスホリラーゼ活性を測定したところ,やはり良登熟型遺伝子をもつものはもたないものに比べ,高い酵素活性を示すことが確認できた.特にSUT1-2において酵素活性の増加が顕著であった 4 上記のSUT1の遺伝子型を判別できるSSRマーカーを開発した.その結果,AS2に関するIn/Delマーカーと同時に多重PCRが可能となり,2種の良登熟型遺伝子型を同時かつ容易に判別可能となった 5 SUT1座の第1イントロン内にイネ内生トランスポゾンmPingが挿入された系統が見いだされたので,この系統と挿入のない品種銀坊主を用い,SUT1の遺伝子転写量を定量PCRによって測定した.その結果,両者の間に有意な差は認められなかった.これは,挿入箇所が長大な第1イントロン内であることと関連している可能性がある.今後は,上記の組換え近交系で良登熟遺伝子の転写量を測定する予定である
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