1 APS2およびSUT1とともに極穂重型イネ品種の登熟程度に関わると考えられるADPグルコースピロホスホリラーゼ大サブユニット2(APL2)座内の塩基配列多型を極穂重型を含む6品種において再度調査した.その結果,昨年度に異なるハプロタイプすなわち対立遺伝子を持つと考えられていた南京11号は,密陽23号およびタカナリと同一のハプロタイプ,APL2-2をもつことが明らかになった.したがって,APL2座には,登熟程度が低いアケノホシ等がもつAPL2-1,登熟程度が比較的良好である密陽23号,南京11号,タカナリ等がもつAPL2-2およびコシヒカリ等がもつAPL2-3,さらにはAPL2-4,APL2-5が,レアアレルを除くと存在することが200以上のイネ品種の遺伝子型をCAPSマーカーによって探索したところ判明した. 2 上記のAPS2,APL2,SUT1座において異なる遺伝子型をもつ密陽23号(APS2-2 APL2-2 SUT1-2)とアケノホシ(APS2-1 APL2-1 SUT1-1)の交雑F4世代において,穎花数/穂が200粒以上でかつ上記3座において得られる対立遺伝子の全ての組み合わせの遺伝子型のうち,APS2-1 APL2-1 SUT1-2を除く7遺伝子型の各々をもつ系統を栽培し,登熟程度を調査した.その結果,APL2-2をもつものはAPL2-1をもつものよりも,他の2座の遺伝子型如何に拘わらず,有意に高い登熟程度を示すことが明らかになった.したがって,極穂重型イネ品種の登熟程度の向上にはAPL2座の中のAPL2-2が大きく貢献する可能性がある.ただし,本実験での材料は,上記3座以外の遺伝的背景が均質ではないので,今後はこの点を解決した材料を用いて詳しく検討する必要がある.
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