(1)イネにおいて群落上/下部の光環境が分げつ発生・伸長に及ぼす影響を明らかにする実験解析のため、群落基部補光装置を作成し、その効果を検証することが昨年度の目的であった。本課題で作成した補光装置により群落基部の赤色光(波長:640~680nm)の光量は最大でおよそ60μmol/m^2/s増加させることができ、これは日中の自然条件で測定した赤色光のおよそ半量程度に相当した。また最高分げつ期以降では、群落基部の赤色光と近赤色光の比(R/FR値)を標準区の0.27~0.57から280~581へと補光により大きく改変できることを確認した。 作成した補光装置を用いて群落基部の光量やR/FR値を大きく変えた条件でも、分げつ数の増減は標準区と比べ明らかな差異はなかったことから、群落基部における光(赤色光)環境が分げつの発生動態へ及ぼす影響は小さいことが示唆された。ただし前年の試験では慣行に比べ最高分げつ期の茎数が少なく、群落サイズや分げつ数の減少が小さい栽培条件であったため評価環境を再検討することが不可欠と考えられる。 (2)遺伝子型の異なる北陸193号(indica)、日本晴(japonica)、モミロマン(mixed)の3品種について栽培試験を行い、分げつ発生動態とN施肥量との関係性の基礎知見を得た。いずれの品種も多N施肥条件で茎数は高く推移したが、既報と異なりN施肥量間で最高分げつ期の差異はみとめられなかった。またjaponicaで穂数型品種である日本晴は分げつ発生時期が早く、その後の分げつ数も大きく推移したが、いずれの施肥区でも最高分げつ期の品種間差はみとめられなかった。(1)、(2)の実験から得られた知見は、茎数予測モデルの構築において重要な基礎データとなる。
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