研究課題/領域番号 |
22580021
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
吉田 ひろえ 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター・情報利用研究領域, 任期付研究員 (90546920)
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研究分担者 |
大角 壮弘 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター・水田利用研究領域, 任期付研究員 (80455310)
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キーワード | 水稲 / 分げつ / 群落光環境 / モデル |
研究概要 |
(1)光環境が水稲の分げつ発生・伸長に与える影響を明らかにすることを目的に、前年度に作成した群落基部補光装置を用いて赤色光のみを補光しR/FR値を大きく増加させる処理区や群落上部に寒冷紗をかけた遮光区を設け、その分げつ動態を評価した。結果として、前年度と同様にいずれの処理区でも有意な分げつ数の増減はみとめられず、分げつの発生・枯死には光環境以外に強く分げつ数の決定に関わる要因があると考えられた。一方、群落上部の遮光は地上部乾物重を低下させ、上位葉のSPAD値、比葉面積、葉/茎重比を大きく増加させたが、群落基部の補光によってこれらの変化が抑制されることが示唆された。群落基部の光環境は分げつ動態以外の生育特性には大きな影響をもっていると推察された。群落上/下部の光環境が水稲の生育に与える影響を、分離して評価できた意義は大きいと考えられる。 (2)前年度と施肥条件を変え生育初期に肥効の強く表れない慣行性窒素肥料を用いて栽培試験を行ったところ、いずれの品種でも前年度より最高分げつ期が大きく遅れ、最高分げつ期決定への施肥条件の重要性が確認された。また最高分げつ期前後に土壌溶液を採取しアンモニア態窒素濃度を評価したところ、既報の通り最高分げつ期において窒素濃度がかなり低下していることが観察された。以上より、水稲の分げつ動態には光環境よりも土壌中の窒素動態が強く関わる可能性が示唆され、この効果をより詳細に解析する必要があると考えられた。 (3)アジアの多様な環境条件下で生育した水稲9品種の分げつ発生動態についてモデル解析を行い、窒素吸収量あたりの分げつ数の品種間差異は、葉面積あたりの葉身窒素量を支配する品種パラメータと関連があることが明らかになった。穂数予測モデルの構築に向けて重要な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水稲穂数予測モデルの構築に向けた基礎データの取得は順調に進んでおり、本研究で新たに構築した水稲群落基部補光装置を用いた実験により、分げつ発生動態に関する重要な知見を得た。さらに本研究で遂行中の圃場試験結果のみならず、既報の生育データを用いることによって、水稲穂数の品種間差についての解析も進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究成果から、群落基部光環境が分げつ発生動態に与える影響については一定の知見を得た一方、生育初期の気温と土壌溶存アンモニア態窒素濃度の相互作用の重要性が指摘された。そこで穂数モデルの構造決定に関わる重要な基礎データを拡充する目的で、茨城県つくば市と新潟県上越市において、作期移動試験と土壌アンモニア態窒素濃度のモニタリングを並行して行う。今年度の連絡試験では供試品種は1ないし2品種に絞り、穂数の品種間差の解析は既報の水稲生育データを用いて進めることとする。
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