研究概要 |
スカシユリ花弁におけるアントシアニン色素の蓄積は優性の一遺伝子に支配されている.生合成遺伝子の転写を制御している転写調節因子の発現を解析したところ,色素が蓄積している花弁でのみLhMYB12転写調節因子の発現が認められることより,LhMYB12遺伝子が品種間差異を決めていると予測された.しかしLhMYB12の優性対立遺伝子と色素の蓄積が共分離することはまだ示されていない.'モントルー'と'ルノアール'の交雑に由来するF1集団を用いて遺伝分析を行ったところ色素発現とMYB12遺伝子は共分離したことより,MYBI2遺伝子が品種間差異の原因になっていることを確かめた.LhMYB12遺伝子を増幅するために用いたPCR primerはピンク花のDNAマーカー選抜に応用できる.一方で,スカシユリ花弁のピンク色には,light pink, pink red, chocolate brownなどの違いが認められる.この色調の違いはアントシアニンの組成の違いではなく,主にアントシアニンの蓄積量の差によること,色素の蓄積量とLhMYB12の発現量には正の相関が認められることを明らかにした.色素の蓄積がMYB12の発現量を介して調節されていることは興味深い.さらに本研究では,顕微鏡を用いてアントシアニンスポットの切片を経時的に観察することによって,スポットの発生機構を形態学的に解明した.スポットの形成に必要な細胞分裂がいつどこで起こるのか明らかにした.
|