研究概要 |
申請者は,リンゴのガラクトグルコマンナンがヘミセルロース性多糖として存在し,そのオリゴ糖断片がヒト大腸がん細胞(COLO201)に対して増殖抑制活性を示すことを明らかにした.そこで,リンゴ果実由来多糖よりオリゴ糖断片を調製し,糖鎖構造とガン細胞に対する増殖抑制効果の相関性について知見を得ることが本研究の目的である. 今年度は, (1)リンゴガラクトグルコマンナンオリゴ糖を調製するため,多糖画分の分離・精製について,条件検討を行った.すなわち,リンゴ可食部より数段階の抽出工程を経て得られたヘミセルロースIIアルコール不溶性画分をイオン交換クロマトグラフィーに供し,素通り画分を回収した.続いてキシログルカナーゼを作用させ,ゲルろ過クロマトグラフィーにより精製した.構成糖分析より,得られた多糖画分中のガラクトグルコマンナンはおよそ40%であることが示唆された. (2)また,ヒト大腸ガン細胞(DLD-1)を牛胎児血清10%含有RPMI-1640培地で培養し,96ウェルのマイクロプレートに2.0×103個/we11となるように調整した後,37℃のCO2インキュベーターで24時間培養した.続いて各種コンニャクマンナンオリゴ糖を1ウェルあたりの最終濃度が1,0mg/m1となるように投与し,48時間培養した.MTT法により生細胞を計測したところ,いずれの場合もコントロールと同様の値(100%前後)となり,DLD-1に対する増殖抑制活性は認められなかった.しかし前述の通り,リンゴ由来のグルコマンナンオリゴ糖がCOLO201に対して増殖抑制活性を示すことから,コンニャクマンナンオリゴ糖にも同様の活性があると期待できる.このことが明らかとなれば,マンナン由来オリゴ糖断片のどの糖鎖配列が生物活性を有するのかについて,新たな知見が得られると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果を元に,リンゴガラクトグルコマンナンオリゴ糖を調製し,DLD-1の増殖抑制に及ぼす影響を調べる,また,同様の実験を異なる細胞(ヒト大腸がん細胞COL0201およびヒト食道ガン細胞TE-1)を用いて行うとともに,コンニャクマンナンオリゴ糖についても試験を行う.得られた結果から,グルコマンナンオリゴ糖断片のガン細胞に対する増殖抑制活性についての知見を得る.
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