イチゴ(Fragaria ×ananassa.8倍体)には,一季成り性品種(一般に質的短日性)と,四季成り性品種(一般に量的長日性)がある.イチゴのように,同一種内で短日性と長日性の品種や系統が利用されている植物は,生産上および学術上,大変貴重である.そこで,本研究では,イチゴの一季成り性品種と四季成り性品種の花成関連遺伝子を単離・比較することにより,四季成り性の分子機構を明らかにし,育種等への利用に資することを目的とする.しかし,イチゴの栽培種は,高次倍数体で遺伝子の解析が困難である.そこで,本年度は,イチゴ属のモデル植物として2倍体のワイルドストロベリー(F. vesca)の一季成り性の系統と四季成り性の品種などを供試した. 前年度の試験で,ワイルドストロベリーの四季成り性系統であると考えられた‘Alexandra’と‘ミグノネット’について,自家受粉や交雑して得られた実生の四季成り性の判定を試みた.昼温(6~18時)/夜温(18~翌6時)を25/20℃に設定した自然光型ファイトトロン内で,自然日長(12~16時間・3~10月)で栽培したところ,試験期間中に開花に至った個体があり,これらの個体は四季成り性である可能性が示唆された.本試験では充分な数の実生が得られなかったことから,ワイルドストロベリーにおける四季成り性の形質の遺伝については,F2世代を得ることも含めて今後も検討する必要があるが,これを明らかにすることができれば,高次倍数体である栽培種への応用も可能になると考えられる.また,花成関連遺伝子のクローニングも検討の余地がある.
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