研究概要 |
砂丘メロンは,収穫後の低温(2℃前後)貯蔵中に果皮直下の果肉が果実内部に向かい陥没する陥没障害が発生する.特に品種'ライフ'で発生しやすく,果肉の軟化が起こる前に現れる.'ライフ'は山形県で日本で最初に民間育種されたネットメロンであり,主力品種'アンデス'と並ぶ地域特産品種として有望視されている.本研究ではメロン品種'ライフ','グランドール1号'及び'アンデス'を中心に,陥没障害が発生する要因を,(1)果皮と果肉の形態的変化,(2)クチクラ及びネット組成の化学変化及び(3)これらの関連酵素活性の変化,に着目し,陥没障害発生のメカニズムを明らかにすると共に,陥没障害が発生し難い貯蔵条件を確立することを目的として研究を実施している.平成22年度の研究では,ネットの構造と機能について焦点を絞って研究を行った.その結果,陥没障害が出やすい品種では,果実の肥大速度が速く,果皮の亀裂を修復するためのネット形成が不十分なまま成熟を迎える可能性が示唆された.ネットの形成は,亀裂の両端からリグニン状の癒合組織が成長して徐々に亀裂を埋めて行くが,顕微鏡観察の結果では,両端から成長した組織同士が十分に癒合していないケースがあることが明らかとなった.また,クチクラの主要成分である脂質の化学的変化も,果実における水の保持力の違いに影響し,より水が抜けやすい品種ほど陥没症状が起こりやすい傾向があることが明らかとなった.そのため,平成23年度では,クチクラ及びネットの化学成分分析及び関連酵素活性の変化を中心に,果皮表面からの水の損失と陥没障害との関連を明らかにする予定である.
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