研究課題/領域番号 |
22580026
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
元村 佳恵 山形大学, 農学部, 客員教授 (60507630)
|
研究分担者 |
西澤 隆 山形大学, 農学部, 教授 (10208176)
|
キーワード | メロン / 陥没障害 / クチクラ / ネット / 脂肪酸 / リグニン / 成熟 / 亀裂 |
研究概要 |
ネットメロンの収穫後の低温(2℃前後)貯蔵中に発生する陥没障害について、メロン品種'ライフ'、'アンデス'及び'グランドール'を中心に、陥没障害の発生要因を、(1)果皮と果肉の形態的変化、(2)クチクラ及びネットからの水分の蒸散量の変化、(3)クチクラとネットの構成成分の化学的変化、及び(4)これらの関連酵素活性の変化に着目し、陥没障害発生のメカニズムを明らかにするとともに、陥没障害が発生し難い貯蔵条件を確立することを目的として研究を実施している。(1)果皮の形態的変化については、実体顕微鏡、レーザー蛍光顕微鏡及び電子顕微鏡を用いてネットとクチクラ及び果実の表皮組織の形態的観察を行い、陥没が発生しやすい品種では果実の生長が早く成熟までの期間が短いため、ネット形成が不十分なまま成熟を迎える可能性が示唆された。また、組織化学的観察により、果実の成熟に伴ってネット部分を覆う物質が形成されることが観察された。(2)ネットとクチクラからの水分の蒸散を測定した結果、果実のネット形成期にはネットからの蒸散がクチクラからの蒸散の10倍以上であったが、果実の成熟に伴って、ネットからの蒸散が急速に減少し、収穫期にはクチクラからの蒸散とほぼ同じレベルにまで低下したことから、形成されたネットに蒸散を抑制する物質が集積する可能性が考えられた。(3)ネットとクチクラ層を果実の表皮組織から分離する方法を新規に開発し、ネットとクチクラを分けてそれぞれの成分として脂質、リグニン、スベリンに注目し、まず、脂質の量とその脂肪酸組成の解析を行った。その結果、ネットに特徴的に集積する成分の存在の可能性が示唆された。(4)リグニンやスベリンの生成に関与する酵素として過酸化酵素の定量を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メロン果実表面のクチクラに形成された亀裂及びその癒傷組織であるネットの形態的解析を行い、陥没障害が発生しやすい品種「ライフ」では成熟期になってもネットが十分完成しないことが示唆された。クチクラとネットからの水分の蒸散を測定し、水分の損失が陥没の形成に影響していることが推定された。また、ネットとクチクラの脂肪酸組成の違いを解析中で、ほぼ予定通りの進捗状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度には、果実表面のクチクラとネットの脂肪酸組成の解析を進める。また、陥没と表皮組織の細胞膜の機能を解析するため、果実組織からの細胞質の漏洩を測定する予定である。陥没障害の発生について、クチクラとネットの形態、果実からの蒸散、脂肪酸組成との関連について、科学雑誌に論文を投稿する準備を進めている。さらに、リグニンや関連酵素の変化と陥没障害の関連を研究する。陥没障害が発生し難い貯蔵条件を検討する。現時点までの進行状況からみて研究計画を変更する必要はない。
|