ネットメロンにおけるネットの水保持機能を調べるため,ネットの発達が著しい,アールス系メロンを用い,ネットを剥皮した果実と,部分的にネット表面を削り取った果実とで,蒸散量を比較した.その結果, ネット表面を部分的に削り取った場合には,無処理区に比べ蒸散量が約2倍であったのに対し,ネットを剥皮した果実では蒸散量は10倍以上に増加した.剥皮した場合と削り取った場合のネット構造を電子顕微鏡及び共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察すると,剥皮した場合はスベリンを含むコルク細胞が完全に失われていたのに対し,削り取った場合はスベリンを含むコルク細胞の一部が残っていたことから,ネットはスベリンを含むコルク細胞の一部が残っていれば,高い水分保持機能を有することが示唆された. また,こうした処理による水分損失は,主に表皮に接する外果皮細胞から起こっており,外果皮細胞が水を失って収縮を起こすことにより,組織全体が陥没するようになることが明らかとなった.こうした結果を踏まえ,収穫後のネットメロンで生じる陥没症状は,ネットを形成するコルク細胞のスベリン化が十分に進まず,外果皮組織における水分が失われることで,徐々に外果皮全体が収縮し,最終的に陥没症状を引き起こすものと考えられた. さらに,表皮におけるリグニン化やクチクラの脂肪酸組成と蒸散との関係は,メロン以外の果物,特に低温で障害が発生しやすい熱帯性果実でも当てはまることから,メロンと同時に熱帯性果実でも同様の研究を進めた結果,今後の収穫後の流通過程における果実の水分保持機能と品質維持の研究進展に大きく貢献することが出来た.
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