研究概要 |
わが国の畑地土壌の多くはミネラル含量が少ないことから,植物性ミネラルを用いて野菜中の含有ミネラル成分を増やせば,高付加価値の野菜として市場に提供できる. 植物性ミネラルは, ミネラルの他, フミン酸やフルポ酸を含み酸性を示すため, 褐変防止効果や抗菌性もある. また, 高濃度のミネラル添加が浸透ストレスとして働き, 糖度, GABA, 抗酸化活性などが増加するなど, 高機能性野菜として付加価値を付与できる可能性がある. こうしたことから,植物性ミネラルを用いた実用的な野菜栽培法を確立することを目的として実施した. 特に, ミネラル処理については, 海洋深層水を用いた野菜類の栽培に関する研究が先行しているが, 海洋深層水は大量に含まれるNaやClイオンを除去する必要があるため, 技術的に解決すべき問題が多い. その点植物由来のミネラルは, これらのイオン含量が海洋深層水に比べかなり低く, そのまま利用できる可能性がある. 平成23年度の研究では, 主に1)ミネラルの吸収性の解析, 2)吸収効率を高める栽培方法の開発, 3)ミネラルを吸収した野菜の品質と栄養価の診断, 4)ポリフェノール含量について明らかにすることで, 植物性ミネラルの最適処理方法を確立し, 実用化可能な栽培方法を模索した. その結果,EC≒4程度ならば大きな生育障害を与えずに栽培できることが明らかとなった. 更に, これらの知見に加え, 培養液に加えたストレスにより, アントシアニンを中心とする色素及びその他のポリフェノール含量の変動を中心に研究を進め, 植物ミネラルの中でも特にフルボ酸に効果が高いことを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は最終年度となることから, 過去2年間で蓄積したデータを基に, 最適な条件で最も抗酸化活性が高くなり, 機能性成分を大量に含む栽培法を確立することを目的として実験を行う. こうした3年間の研究成果は, 植物性ミネラルを用いた野菜栽培法のマニュアル化を目指し, 1年間の継続した研究を実施する. また, 学会発表および科学学術雑誌への投稿を準備している.
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