研究概要 |
ニホンナシ'あきづき'果肉に発生した水浸状褐変組織では健全組織と比べて維管束組織おとびその周辺細胞に構造的な違いは認められなかった.両組織には多くの顆粒状物質の蓄積が認められたが,この物質はデンプン粒であることが明らかとなった.このデンプン粒の変化について調査したところ,'あきづき'では果実成熟が進むにつれて,果肉細胞ではほとんど消失したものの,維管束組織およびその周辺には多く残っていたものの,褐変症状の発生しない'幸水'成熟果では,ほとんど認められず,デンプン粒の消失と水浸状症状の発生との関連性が示唆された.一方,コルク状褐変症状発生部位では周辺の果肉細胞よりも小さい細胞が集まっており,それらの一部はリグニン化していた.これらから,水浸状褐変とコルク状褐変組織では症状発生部位の果肉組織の形態的な特徴が大きく異なることから,両者の発生機構はやや異なるものと考えられた. 果肉褐変症状の発生が急増する果実成熟後期の'あきつき'果実について,構成糖含量および細胞壁構成成分(ペクチン,ヘミセルロース,セルロース)の変化について調査したが,褐変症状の増加に関連するような大きな生理的な変化は認められなかった.果実生育期間における構成糖含量および細胞壁構成成分にういて'あきづき'と'幸水'とで比較したところ,細胞壁構成成分には両品種間に大きな違いが認められなかったが,構成糖含量についてみると'幸水'と比べて'あきづき'ではソルビトール含量は低く推移したがスクロース含量は成熟後期では高くなることが明ちかとなった.これちのことと果肉褐変症状との関連についてはさらに検討を要するものと考えられた.
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