ツツジ園芸品種の花器形質変異に注目し、I.形質の評価や遺伝性を調査し、さらにII.機構解明のために遺伝子解析を行うことを目的とした本研究において、平成24年度では以下のような成果を得た。 ①花器変異形質の評価と交配系統の育成、花器形質の遺伝性調査 花器形質の遺伝分析ならびに新品種開発のための交配計画に基づく交配実生系統の育成(F1およびF2等)を継続し、開花した交配実生の花器形質の継続した観察・調査を行った。特異な花器変異形質のうち、花弁や葉が狭細化した采咲き形質ならびに開花後の花冠が脱落せずに持続性を示す見染性形質を持つツツジ品種を用いた交配系統においては、両親に采咲きまたは見染性品種を用いたF1はすべて采咲きまたは見染性形質を示し、また、通常花と采咲きまたは見染性品種のF1ではすべて通常花の形質を示すことから、采咲きならびに見染性の花器形質は劣性の遺伝子に支配されている可能性が示された。これらの結果を踏まえて遺伝子解析を行い、学会報告ならびに学術論文として報告した。 ②花器形質を制御する遺伝子の単離・解析 花弁が雄ずい化するしべ咲きならびに花冠の持続する見染性品種を用いて、花器形態とMADS遺伝子(AGおよびAP3)発現との関係を調査した。しべ咲きのモチツツジ`銀の麾’では、花弁の雄ずい化の程度によってAG遺伝子の発現量も変化することから、両者の関与が示唆された。また、見染性品種を用いた発現解析では、AP3遺伝子の発現量は通常花と比較して減少しており、AP3のDNA構造解析では品種ごとに異なるエキソン領域の構造変異が確認されたことから、形質との関与が示唆された。これらの結果について学会報告し、学術論文として投稿した。
|