研究概要 |
本年度は以下の点について実験および検討を行った. 1.マッピング集団の作成 シャロットとタマネギのDH(倍加半数体)系統間のF1個体由来未受粉小花(7,727個)を培養して77個体の植物体を再生し,再生個体の中の34個体が半数体であることを確認した.また,残りの中の32個体は二倍体であった.次に,1種類の共優性CAPSマーカー座(GI)に関して72再生個体における遺伝的分離を観察したところ,二倍体においても両親タイプしかみられなかった.したがって,得られた二倍体は全てDHであることが示唆された.解析した全再生側体におけるタマネギ型とシャロット型の分離における観察値(40:32)はメンデル遺伝の期待分離比(1:1)に適合し(x^2=0.89,0.25<P<0.5),これらの集団がマッピングに利用可能であることが示唆された.さらに,F_1個体の自家受粉とシャロットDH由来花粉を用いた戻し交雑によりF_2とBC_1の種子もそれぞれ多数得られた. 2.DNA多型の検出 16種類のプライマー組合せを用いてタマネギとシャロットのDH系統およびF1個体のAFLP分析を行った結果,総計554本のバンドが検出でき,そのうち,タマネギで検出されたバンドは526本,シャロットで検出されたバンドは523本であった.また,タマネギ特異的バンドは31本,シャロット特異的バンドは28本それぞれ検出され,バンド共有率は89.4%であった.また,合計60種類のSSRプライマーセットを用いて総計588本のバンドが得られ,タマネギ特異的バンド138本およびシャロット特異的なバンド140本がそれぞれ検出され,バンド共有率は52.7%となった.さらに,34種類のESTプライマーセットを用いて多型解析を行ったところ,2種類のSCARマーカー,10種類のCAPSマーカーおよび2種類のSNPマーカーを得ることができた。この様に,タマネギとシャロットDH系統間において様々な手法でDNA多型の検出を行い,数多くのDNAマーカーを得ることに成功した.得られたマーカーの多くはF_1個体に遺伝することが確認された.今後,多型が検出されたプライマーセットを用い,各種分離集団をマッピング研究に供試していく予定である. 3.シャロット特異的サポニン化合物の物質同定 シャロットの根から抽出した粗サポニンをTLCで分画し,各フラクションの乾腐病菌に対する抗菌活性を調べた.最も顕著な抗菌活性を示したフラクション(No.5)の化合物について液体クロマトグラフ質量分析およびプロトンNMR分析を行った結果,本化合物は分子量708のスピロスタノール型サポニンであることが判明した.また,細菌に対して抗菌活性を示したフラクションNo.7の化合物はフラボノイドのケルセチンと同定された.
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