研究概要 |
1.シャロットとその倍加半数体(DH)を花粉親に用いてS型細胞質雄不稔タマネギ系統との検定交雑をそれぞれ行って得られた個体の花粉稔性を調査した結果,全てが花粉不稔を示したので両者の核内稔性回復遺伝子座(Ms)の遺伝子型は劣性ホモ接合のmsmsであることがわかった.タマネギDHの当該遺伝子型は優勢ホモ接合のMsMsであることが分かっているので,両DH間の交雑により得られる分離集団はMsのマッピングに適した集団であることが確認された. 2.2010から2011年にわたり,タマネギDH系統とシャロットDH系統間のF1雑種の未受粉小花を培養することによりF1由来雌性発生個体群(Fl-GPP)の作出を行った.10,604個の未受粉小花を培養して100個体の植物体再生に成功し,これらについて17種類のESTと10種類(わSSRからなる27種類のDNAマーカーの分離比を確認したところ,26種類がメンデル遺伝め期待分離比(1:1)に適合した,また,マーカー間の連鎖解析を行ったところ,8組において強い連鎖が観察された.以上より,F1-GPPは優れたマッピング集団であることがわかった. 3.シャロットとタマネギのDH間のF1雑種の自家受粉を行った結果,221個体から成るF2集団が得られた,そこで'先ず,分離集団としての適性を確認するためにDNAマーカーの遺伝分離を調査したところ,一種類のDNAマーカーの分離における観察値がメンデル遺伝の期待分離比(1:2:1)に適合した.さらに,形態マーカーや量的形質に関する解析も進めており,本集団はF1-GPPの補完的な材料としてマッピング研究に利用できることが示された. 4.ネギやタマネギの単純反復配列やESTの塩基配列情報に基づいて得られた425種類のDNAマーカーを用いて解析を行ったところ,176種類において種間多型が確認された.さらに,これらの多型マーカーの予備解析をF1-GPPより任意に抽出した9個体を用いて行ったところ,殆ど全てのマーカーについて分離が確認され,今後の本格的な遺伝分析に期待がもたれた. 5.各DH個体の根から得られたサポニン粗抽出物を用いて定性・定量の比較解析を行ったところ,両者の違いが検出された.そこで,現在,F1-GPPおよびF2を用いてこれらの形質に関する遺伝分析を実施中である.
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今後の研究の推進方策 |
十分な数のF1由来雌性発生個体とF2個体の作出に成功したので,連鎖地図の構築とサポニン関連遺伝子のマッピングは順調に進行していくことが予想される.耐病性試験と稔性回復遺伝子座のマッピングでは、ともにF1由来雌性発生個体とF2個体の自殖後代をそれぞれ作出する必要がある.しかし,両集団の種子稔性は著しく低いため,後代作出は容易ではない.そこで,来年度は胚珠培養などの植物組織培養技術を駆使して種子稔性の向上を図り,個体獲得効率を上げることを試みる予定である.
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