コチョウランは、わが国のラン科植物の営利栽培で最も生産額が大きい。その約9割が4倍体の種子繁殖性品種であるが、花色が白色に限定されている。市場でのコチョウランの花色の構成が単調なことから、近年では白色花以外の品種が切望されている。しかし、4倍体では花色の遺伝様式が一層複雑になり、育種年限が極端に長くなることから、白色花以外の種子繁殖性品種の作出は、循環選抜法などの従来の育種手法では、実用的には不可能とされてきた。また、微細繁殖(いわゆるメリクロン)では、培養変異が多発するため、栄養繁殖性品種は普及していない。これまで一般作物においては、半数体を倍加して得られた完全ホモ接合体を自殖して、種子繁殖性品種として利用している。本研究は、コチョウランの半数体の誘導と染色体の倍加処理によって、完全ホモ個体を得る条件を明らかにし、コチョウラン有色花の種子繁殖性品種を作出するための基礎知見を得ることを目的として行った。市販のコチョウラン品種3点を供試して、半数体を誘導する条件の検討を行った。現在、幼植物体を試験管内に維持している。コチョウランでは体細胞多倍数性(polysomaty)が観察されるので、倍数性の検定は根端約1mmの若い組織を用いる。従来の方法では根の直径が約4mmに達して、細胞数が確保出来るまで、倍数性の検定は出来なかった。昨年度は、検定の際に細胞を入れるサンプルチューブを工夫することによって、従来よりも格段に少ない細胞数でも倍数性の確認が可能となった。
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