研究概要 |
本年度は、発達中期の花芽の花弁、雄ずい、副花冠等の各花器官ごとに、サイトカイニンによる花形変化の過程における分裂組織形成関連遺伝子の発現とサイトカイニンシグナルとの関係を明らかにすることを目的とした。 まず、トレニアから、2種類のKNOXI(TfBP,TfKNAT)、2種類のWUSCHEL(TfWUS1,TfWUS2)、3種類のCLVATA1(TfCLV1-1,TfCLV1-2,TfCLV1-3)の完全長cDNAを単離した。その上で、花芽発達の中期にCPPU処理を行い、花形変化を誘導した花芽の各器官において、定量PCR法により、サイトカイニンシグナルの強さの指標となるタイプAレスポンスレギュレーター(TfRR)遺伝子も含め、発現解析を行った。その結果、いずれの花器官においても、TfRR1の発現はCPPU処理後1日目から誘導された。その後、TfRR1の発現誘導から1日程度遅れてTfWUS2の発現が誘導された。逆に、TfCLV1-2とTfCLV1-3の発現は、CPPU処理後の花弁および雄ずいにおいて抑制された。TfBPおよびTfKNAT発現は、CPPU処理後の花弁では一過的に上昇し、また雄ずいではCPPU処理後5日後から発現が上昇した。 以上の結果から、CPPU処理によりまずサイトカイニンシグナルが上昇し、この状態が一定期間続いた後に分裂組織関連遺伝子の発現変化が誘導され、花形変化が引き起こされると考えられた。さらに、WUSCHELとCLVATAはお互い直接的に発現調節に関わることが知られていることから、CPPU処理によるTfWUSの発現誘導およびTfCLV1の発現抑制はこれらの調節関係に合致し、サイトカイニンシグナルがこれらの遺伝子の調節に関与していることを示していると考えられた。
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