研究概要 |
タバコモザイクウイルス(TMV)が抵抗性遺伝子(N)を有するタバコに感染すると,ウイルス複製酵素の一部(p50)がエリシターとして認識され,N遺伝子の転写増強が起こり,過敏感応答(HR)が誘導される。申請者らは,N遺伝子転写増強において,転写因子DOFタンパク質が関与することを新規に証明することができた。N遺伝子のエンハンサー配列(20bp)に含まれる2個のDOF結合モチーフ(AAAG)に着目し,これらに変異を導入した配列と野生型配列をレポーター遺伝子(GFP)に接続して,エリシターとなるp50,Nタンパク質及びDOFタンパク質の転写活性化能を評価した結果,BBF1はp50やNタンパク質と相乗的に働くだけでなく,BBF1単独でも転写活性化を起こすことが明らかになった。 さらに,BBF1以外のタバコDOFタンパク質であるBBF2およびBBF3の完全長ORFを含むcDNAのクローニングを行い,これらの組換えタンパク質を作製し,これらBBFタンパク質とin vivoで相互作用している新規タンパク質の同定についての新しい研究を進めた。その結果,以下の3つの可能性が示された。 (1)BBF1は,BBF1自身及びBBF2と相互作用する。 (2)BBF1は,RNAポリメラーゼと他の転写因子をつなぐ役割が知られているBTF3という因子と相互作用する。 (3)BBF1およびBBF2は,感染特異的タンパク質としてよく知られているPR-1と相同性を有するprb-1bと相互作用する。
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今後の研究の推進方策 |
DOFタンパク質が他のタンパク質因子と相互作用する可能性が見出だされたので,3種のDOFタンパク質すなわち,BBF1,BBF2,BBF3について,それぞれが共通の因子と相互作用するのか,あるいは特異的な相互作用能を示すのかについて詳細な解析を進めたい。また,これらのタンパク質を一過的に過剰発現させたときのタバコ細胞内でどのような遺伝子発現の変動が起こるかについて,網羅的に調べる目的で次世代DNAシーケンサー(イルミナ)を利用した研究に着手したい。
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